FRP貯水タンク(貯水槽)の種類

FRPパネルタンクの変遷

FRPパネルタンクはパネルとパネルの間に止水をする柔らかいパッキンを挟み込みボルトで締結して貯水できるようにした構造物です。
四角い容器に水を入れると水の水頭圧(ヘッド圧)で四角から丸になる様な応力がかかります。
例えば1リットルの牛乳パックの頭の部分を切って四角い容器を作るとします。これに水を入れると水の重力で容器を外に広げようとする応力がかかります。すると四角い牛乳パックが上から見ると丸くなっている様子が見られます。
こう言った状態にパネルタンクがなると水の水頭圧に耐えられなくなって潰れてしまいます。水の重力に負けない構造、つまり補強材による補強が必要になってくるわけです。

建築基準法の耐震設計基準の変遷に合わせてFRPパネルタンクの補強材による補強も様々な方式に変わって行きます。

まずこれがステーボルト方式です。FRPパネルタンクが水の応力で外に広がろうとする力をタンク内側からステンレスの棒で側面同士を引っ張り合わせることで支えています。
1980年頃まではほとんどがこの補強方式でした。タンクの中がジャングルジムの様になり清掃がやりにくいとか、ステンレスの棒が腐蝕してタンク強度が落ちるなどの問題があります。しかし構造的には単純なので後の補修や補強がし易いという利点もあります。

昭和53年(1978年)に発生した宮城沖地震を契機に貯水タンクの耐震設計(旧耐震)が必要となり、昭和56年(1981年)に建築基準法の一部が改正されて新耐震設計基準が施行されました。

そのためにFRPパネルタンクも新耐震基準をクリアするためにこの様なブレス方式の補強材に変わります。
ステンレスのアングル補強材をトライアングルに設置して強度を上げました。ステンレスのアングルを使っているので清掃時にゴム手袋をしているにもかかわらずエッジ部分で手を切ったりとか、四角い構造体を三角の形状で支えているので融通が利かず、補強材自体がFRPパネルを破壊して漏水する等の欠点があります。ですから補強材の一部をステーボルトに交換してから補修・補強を行なう必要があります。
1997年頃までこの方式が続きました。

平成7年(1995年)に発生した阪神・淡路大震災以降に建設省では「官庁施設の総合耐震計画基準」を翌年(1996年)に制定しました。この中で特に地震発生時にタンク内部の水が波立つスロッシング現象で、タンクの天井部を突き上げて破壊する事例に対して、安全策を施す事が定められています。

そしてこちらがそれ以降に登場した外補強方式のパネルタンクになります。
ボックスフレーム構造になっているので外補強材だけで自立します。丁度フレームだけで自立するキャンプ用のロッジテントを想像してもらえば分かりやすいと思います。天井部にも大きな鋼材の梁が入っていてスロッシング現象による天井部への水の突き上げにも強くなっています。
また内部の水面下には何も補強材が無いので清掃がし易く、補修・補強もしやすいタンクです。しかし中には天井梁が無かったり、本数が少なかったりするタンクが存在し、それが理由で経年劣化すると天井が裂けて破裂するタンクも事故例として少なくありません。

FRP貯水タンク(貯水槽)の種類と変遷

FRP貯水タンク(貯水槽)の変遷と種類について書きます。

まず、昭和37年に三菱樹脂㈱によって、FRP一体型タンクの生産が始まりました。当時は軽くて丈夫、しかも錆びないと言う画期的なタンクでした。
ただ一体型タンクは現場搬入の際、レッカー等を使用しないといけないと言う困難な点もありました。

一体型タンクには最初に登場した円筒形タンクのほか、このような角型の一体型タンクや

球形タンク等色んな形のものがあります。
静岡で見かけたんですが、この球形タンクがサッカーボールの柄にペイントされていました。

FRP一体型タンクは、軽くて強くしかも錆びないと言う画期的なタンクとして市場に広がって行った訳ですが、搬入だけが問題でした。
その問題を解決すべく登場したのが現場組立式のFRPパネルタンクです。
このタンクは積水工事(現在の積水アクアシステム)によって開発され昭和39年に販売されました。
パネルタンクは1m×1mのパネルで構成されており、エレベーターと人力で搬入して現場で組立ができると言う画期的なタンクでした。
当初10年間は特許により積水の独壇場でしたが、10年を過ぎるや否や大手メーカー(ブリヂストン、TOTO、INAX、三菱、日立etc)の錚々たる企業が建築用貯水タンク市場に参入して、FRPパネルタンクはその機能性で瞬く間にシェアーを拡大して行ったのです。

ここで問題だったのは、当初各メーカーが提唱していたFRP貯水タンクは半永久的でメンテナンスフリーしていたものが、実際には様々な要因でFRP貯水タンクは劣化してゆくものであると言うことが分かったことです。

この頃きんぱね㈱社長は積水のもと、貯水タンクメンテナンス業者として、FRPパネルタンクの力学的構造や劣化現象を目の当たりにしていた時期です。

この頃培われたノウハウが今のきんぱね㈱の貯水タンクリユース工法のベースになっているわけです。